2019年5月18日土曜日

権力がリセットされると

会社が売られることが決まり、それを知らされた時の従業員の反応は、きれいに真っ二つに分かれました。

一方は、特に無反応で淡々と受け止めた人たち。最近入社したばかりの人や、私の後輩がそうでした。端から見ると、私も無反応だったようです。「いずれそうなるだろうと思っていた」「時間の問題だった」「破産しないのか」という感想がほとんど。それはそうで、赤字体質の企業が何事もなく平穏に生きていけるわけがありません。どこかで達観したところがあって、後はタイミングの問題だろうと思っていたようです。

もう一方は、動揺を隠せなかった人たち。このニュースは青天の霹靂だったようで、表情が暗い。「社長にもう会えなくなるのか」「売られた後の仕事はあるのか」…先のことがわからなくなる不安が大きいようでした。例えば工場長、相談役、社長に気に入られている社員。身も蓋もない言い方をすれば、社内政治にお熱を上げていた人たちでした。

社内政治というものは、本当にくだらないものと思います。真実や論理より、保身のアピールや、誤った主張が受け入れられる。しかし、この会社の歴史を振り返れば、社内政治が延々と幅を利かせていた気がします。これまで部長や工場長はころころと変わってきましたが、その全てが社内政治に走った。誰もが、自分が楽になるように、自分の立場が優位になるようにと。その背中を見て育った若手も、真似をするようになったのは不幸の始まりでした。

しかし、親会社という後ろ盾がなくなると、いったん権力はリセットされ、中立的な評価が下されることになります。そうなれば、何も成果を上げず、社内政治のことしか考えられなかった連中はどうなるか。これまでと一変して立場が追われるだろうことは容易に想像がつきます。

親会社が変わり、いったん権力がリセットすることで、会社は良くなるのかもしれません。しかし、いざ大ナタをふるえば、残ったのはごく一握りの人材だけだった…なんてことになれば、果たして会社は存続することができるのでしょうか?社内政治がはびこり、組織としての力がほとんどないことが白日の下にさらされることになれば、そんなダメ会社を買ってくれるようなお人好しはいない気がします。

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