2012年4月28日土曜日

本の紹介 有元葉子著『料理は食材探しから』


本書は「料理は食材探しから」と断言する著者が、質の高い食材の産地を訪ねる紀行文です。なんでも2012年のグルマン世界料理本大賞の紀行文部門でグランプリを受賞したのだとか。

取り上げる食材はみそ、わかめ、砂糖、納豆、しらすといった、普段口にするけれども気にも留められないものばかり。もちろん野菜や牛肉といったのもありますけれども、案外見落としがちなところまで目を向けるのは、なかなかできません。

ぺらぺらとめくっていて目に入るのは美しい写真の数々。料理の写真もそうなのですが、生産者の表情や現場の空気感がしっかりと収められています。
人の表情がとても生き生きとしているのが良いですね。パン屋のおっちゃんとか。歴史や信念、誇りを持って仕事されているのがうかがえ、いいものができるのも納得します。


著者は今でこそ「引き算の料理」と呼ばれるくらいシンプルなレシピを提案していますが、かつては台所が色々な調味料、器具で溢れていた時期があり、レストラン並のスペースが必要になったといいます。

何十年も料理をし続けて、…引っ越しも繰り返してきて、やっと自分にとって必要なものが見えてきたようです。
食材も台所道具と時を同じくして整理されました。ずいぶんと時間がかかったものですが、さすがににぶい私の頭も整理されてきて、今はもう迷いなく本当に自分の必要なものはこれ、と言えるようになりました。
『料理は食材探しから』より


無駄を削ぎ落とした、ごくごくシンプルな料理。そのためには良い食材が必要不可欠。もちろん、良い食材を見極める眼と舌があり、隅々まで細心の注意を払いながら料理をして初めてできることとは思いますけれども。

本書のレシピも無駄なものを極限まで削ぎ落としたようなものです。どの料理も派手さ、華やかさはありませんが、静かな美しさを漂わせていました。

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