2012年9月7日金曜日

本の紹介『新、料理のあとさき』


料理番組や料理本が書店に数多く並び、近年ではレシピサイトもできて、料理のレパートリーは手軽に増やせるようになりました。しかし料理にかかるまでのことや後片付けといった、料理以前の作法については知る機会がほとんどありません。
本来は家庭で学んでいくものなのかもしれませんが、学ぶ機会を逃してしまうと、必要に迫られていざ料理を始めようとなると右往左往しがちです。うっかりスーパーで買いすぎた、台所は散らかし放題、包丁にサビがついてしまった…なんてことに。

そんな調理以前のことを学ぶ機会を、との思いから昭和40年に「料理のあとさき」が出版されました。
著者は家庭料理の研究家として尽力した土井勝氏。食材の買い方から始まり、調味料や調理器具の扱い方、おもてなしのヒントまで幅広くとりあげた本書は多くの主婦に愛された名著となりました。


あれから40年近く経ち、妻の信子氏によって「新・料理のあとさき」が完成しました。
もともとの原書は文書主体で、しかもどことなくかしこまった印象があり、まさに「料理の勉強本」でしたが、新版はそんなイメージを一新。くだけた語り口で、写真が豊富に使用されており、肩の力を抜いてすらすらと読み進めることができます。
とはいえ内容がスカスカになったというわけではなく、たとえば魚のおろし方のように手順を解説するところでは写真が多く追加され、より丁寧な解説になっています。

著者が長年愛用した調理道具の美しさにも目を奪われます。年季を感じさせながらサビや焦げが全く見あたらないのです。丁寧に手入れをすればきれいなまま、とはいえ調理道具にはこびりついた汚れがつきものというのに。
我が身を振り返って襟を正したくなります。


「新・料理のあとさき」で料理の基本を身につけたら、今度は原著に挑戦するのもおすすめ。
料理以前の作法が網羅されているのはもちろんのこと、エッセイとしても楽しい内容です。今となっては古すぎる内容や、スピード重視の現代に合わないところも確かにあるのですが、時が経っても色あせない、普遍的な知恵が詰まっています。

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