2019年7月3日水曜日

怠慢と逃げの果て

私の会社に、植物工場のコンサルタントを名乗る人物が来ました。
どうやら、役員との会話で開口一番
「私なら生産量を2倍にできる」
と豪語。それからも持論をどんどん展開していったそうです。工場を一回り紹介している間も自分語りが続き、それに役員たちはすっかり感化してしまった様子でした。

「彼は凄いよ。頭でっかちの学者たちと違う」
「型破りだけど、言っていることは合理的だ」
「イノベーションはこういう人から産まれるんだよ」
もうべた褒め。

彼の方法論を聞いていると、まあ確かに常識はずれです。単純にまねをすると失敗するはずです。ただ、彼なりのやり方というのがあるらしく、彼の技術支援を受けた工場はどれも成功している、らしいです。

私も気になって彼を調べようとしました。しかし名前を検索しても出てこない。企業名で検索をしても同じでした。普通のコンサルなら、成功した実績はどんどん公開するはずです。自分の成果、自分の考えをSNSで積極的に発信することで、新しい仕事に出会えるはず。しかし、なぜ出てこない?ここまで情報がないのは、逆に不自然です。それどころか怪しい情報が引っかかり、もしかしたら、彼は詐欺師なのでは…と私は首を傾げました。

こういった新しい市場には、良からぬことを思いつき、一儲けしようと企てる輩がいるようです。ノウハウに乏しい業界ですから、コンサルの肩書きを持った人間の言うことを真に受けてしまいやすい。というより、それ以外に頼れるものがないからです。たとえ、内容がデタラメなことであっても。仮に生産が不調であっても、「それは御社のやり方が悪いからです」の一言で片づければよい。言い返せる人がいませんからね。それでいてコンサルフィーはしっかりともらい、頃合いを見てドロンする。

そして、そんな輩は獲物を虎視眈々と狙うわけです。それこそ私のいる会社のように、無策で右往左往している役員たちを。これまであらゆる手を打ってきたが、収益が伸びずに赤字が続く。万策が尽きてもう会社を畳むしかない…藁をもすがる思いの窮地に現れた救世主のように映ったのかもしれません。

しかし、私にしてみれば、役員連中は今まで何も勉強することもなく、何も考えることもなく、何もすることもなく、ただただ赤字を垂れ流していただけでした。生育を良くしようともせず、かといって生産性を上げるわけでもなかった。現場が混乱をしたときも、ただただ傍観しているだけでした。現状の悲惨さは、怠慢、逃げの結果だと思います。そこに救世主が現れた。彼ならこの工場を建て直してくれるはずだ、とすっかり信じ切ってしまったようです。

もし、再建をそのコンサルに委ねることになれば、ただ単に搾取されるだけで破滅に向かうでしょう。まあそれはそれで、おあつらえ向けだと私は思います。

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